脱力系ぷかぷかドイツ日記

省エネぬくぬくドイツ暮らし

ヘッセン州の田舎町でデジカメの開発してます

自分らしさって、どんなことだったっけ

 早いものでドイツに来て、もう一年が経とうとしています。これまで心がけていたのは、今日一日の事だけに集中して朝起きてから夜布団に入るまでを駆け抜けるように終えることでした。先のことを考えても良い事なんてないし、慣れない国にいればなおさら不安が募るだけだからです。そして今ふと顔をあげればすぐそこに一年の節目が来ていた、といった具合です。この一年は生活を成り立たせる事に必死で、これといって楽しいこともなかったけれど、振り返ってみて思い出す大失敗もないのは順調なスタートを切れたということかもしれません。先月は無事に車を購入し、移動がずっと楽になりました。ドイツ語がしゃべれる数人の友達のサポートのおかげでなんとか予算内でまともな車を見つける事ができ、本当に感謝です。

 

 仕事も順調で、自分の現状のスキルと照らしてまあまあのパフォーマンスを出せていると思います。一年がかりでようやく一通りのワークフローを経験しましたが、外資系企業で働いている現在は日本企業時代と働き方が大きく異なります。まず一つは、プロジェクトの命運を握っている当事者としての意識を強烈に感じながら働いている点。欧米企業の特徴として各スタッフの役割が明確に定義され、互いの業務にオーバーラップする部分が少ないことがあります。つまり日系企業とは違って互いに助け合う文化が薄く、誰かがふがいない仕事をするとビジネスにダイレクトに影響することもあり得るということを意味します。なので日系出身の私にとっては、日々の何気ない仕事も結構怖いのです(笑)特に日系のパートナー企業との関係は全て私のコミュニケーションに依っていると言っても過言ではないので。でもその一方で誰も自分をカバーしてくれない代わりに、私の仕事にいちいち口出ししてくるうるさいおっさんもいませんが。

 もう一つは自分の存在価値を同僚にアピールするようになった点です。会議に出たら必ず発言し議論に貢献する。レポートをメールで出す際は私の仕事が正当に評価されるよう、評価に関わるスタッフを残らずccに入れる(ここだけの話、逆に言えば評価に繋がらなさそうな仕事は手抜きでやっています。このような嗅覚も生き残るために必要です。)。もちろんプロジェクトに貢献することを第一としながらですが、自分を同僚に認めさせることに(特に私のような移民は)無頓着であってはいけないのです。アメリカ企業ほどでなくともやはり実力主義の世界ですし、言語的にもビザ的にもハンデのある私の雇用契約はドイツ人に比べて脆いはずですから。欧州企業は残業をしないため体力的には凄く楽だけれど、その分日常がサバイバルで、独特の緊張感があります。

 

 ところで、生活も仕事も順調に進んでいて楽しいは楽しいのですが、何故かここ数ヶ月何か物足りないというか、気持ちがピリッと冴えない気がずっとしているんです。てきぱきと行動しているけれど、とらえどころのない無気力と闘っている状態。充実しているはずなのに何故?考えてみるに、やっぱり頭のどこかで孤独を感じているからでしょう。周りに日本人はおらず、仕事で日系企業とやり取りする場合を覗けば日本語を話す機会はないので、ストレスがたまるのは当たり前なんです。そんな外国人ばかり(自分から見れば)の環境の中で暮らすことによって、日本でドメスティックに形づくられた"自分らしさ"が、今激しく揺らいでいるのだろうと思っています。日本人同士のコミュニケーションの中でプライドをかけて選択し発してきた言葉や、ぎりぎりをきわどく狙っていく笑いのツボの攻め方(?)やらなんやら、そんな日本人的ディテールは、移民がひしめくコミュニティの中では簡単に無効になってしまいます。個々人が違いすぎて、またその違いの幅も広過ぎるから、私のセンスは彼らには伝わらない。つまり日本にいた頃からは性格を変えないともうやっていけないのです。

 実は私は、国境なんて意味が無いようなこれからの時代に多くの人が私と同じ壁にぶつかるのでは、と思っています。つまり、インターナショナルな環境の中で自分らしさをどう再定義するのか?ということです。当たり前ですがこれは小手先ではどうにもならないでしょう。私の見解では必要なのは、インターナショナルコミュニティにおける文化的共通項の把握と理解、個々の発言の歴史的背景を汲み取る知識と洞察力、トライ&エラーで手応えを掴む勇気とそれを繰り返すための長い時間、世界中の人の心の琴線に触れる絶妙な言い回しを可能とする抜群の英語力、あたりです(多い)。母国語以外の言語で外国人と本当に分かりあうことなんて土台無理な話だという人もいるけど、やってみなきゃ分からない。少なくとも"純日本人的自分らしさ"に甘んじるような楽な方向に逃げたくないし(というか、正確に言えばその方向は実際には楽じゃないから行きたくない、というのが私の直感)、焦らずじっくり時間をかけて、人や文化を眺めていこうと思います。そしてあわよくば、より普遍的な自分が見つかればいいな、と。

 

※先月購入した中古のフォルクスワーゲンのポロ↓

初日にいきなりバッテリーがあがったり、壁にぶつけてナンバープレートが曲がったりトラブル続きですが笑、運転はもともと好きなのでこれから遠出するのが楽しみです。車の技術にも興味があるので、ゆっくり勉強していくつもりです。

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