脱力系ぷかぷかドイツ日記

脱力系ぷかぷかドイツ雑記帳

ヘッセン州の田舎町でデジカメの開発してます

サンクコスト中毒にならずに生きていけるだろうか?

 年明けから仕事で忙しい日々を過ごしています。電子機器の開発というのは本当にトラブルの連続で、昨年末には担当プロジェクトの一つが消失する危機まで経験しました。。その後なんとか持ちなおし、今はこのまま順調に進んで欲しいと祈るばかりです。上手くいけば自分が携わった商品が初めて今年の3月にリリースされるので、今から楽しみにしています。入社してから一年半が経ちそろそろ会社のダメなところもちらほら見えてくる頃ですが、それを過剰に気にしない事が大事だと思っています。結局自分ができることをその場その場でやっていくだけですから。
 
 ところで、この間ネット徘徊中に”サンクコスト効果”という面白いトピックに出会いました。これは人間がある対象に労力・時間・金などを投資して望んだ成果が得られなかった場合、合理的な判断ができなくなり、また同じ対象に投資してしまう心理効果を指すそうです。例えばパチンコで負ければ負けるほど、負けた分を取り戻そうとしてさらにお金をかけてしまうこと等が挙げられます。サンクコスト(= Sunk Cost)は「埋没費用」と訳され、回収できなかった投資分を指す経済学の概念です。たちが悪いのは投資を繰り返す自分を正当化するために、人は無意識の内に投資対象をそれに値する魅力的なものとして錯覚するようになる点です。
 
 この話には何かはっとさせられるものがあります。例えば仕事がつまらないとぼやくサラリーマンがすぱっと会社をやめられないことにも関係があるような気がします。そのような人の多くは心のどこかで、あんなに頑張ってきたのに今辞めたらもったいない、と思っているが故に働き続けているのかもしれません。そんなに悪くない仕事じゃないか、と自分に言い聞かせながら。以前職場の上司がまだ若い私に向かって「君は定年まで、あと30年ここで働くのだから~~」と当然のように言ってのけたことがあり、ものすごく嫌な気分になりました。その後の30年が(つまりおおよそ自分の人生が)内容の見え透いた消化試合のように思えたからです。幸運にも私は今仕事を楽しめているけれど、これから歳を重ねるに連れて否応なくキャリアは”積み上がって”いくことになります。そしていつか、自分の後輩に向かってあの上司と同じような発言をしてしまわないだろうか?自分はサンクコスト中毒にならずに生きていけるだろうか。若い時の苦労は買ってでもせよとは言うけれど、これは苦労してきた人ほど気をつけなければならない事です。
 
 対照的な話で、昔スガシカオは(私は彼のファンなのです!)何かのテレビ番組でインタビュアーに「五年後、十年後の自分はどうなっていると思いますか」と訊かれて、そんな事考えるわけないじゃーん、めんどくさーいと笑いながら、「だって俺明日のスケジュールも知らないもん」と言いました。あの時私は、自分もこんな風に生きられたらいいなと思ったし、あれから幾分歳をとった今になってもその感触が残っています。 彼は短い沈黙のあと、そんな先のことは本当に何もわからない、歌っていられればいいなとは思うけど、とぼそりと付け足しました。
 
 サンクコスト中毒を回避するためのリスクヘッジとしては、やりたいことを複数持っておくのが有効かもしれません。とにかく”仕事一筋”というのは絶対危険なので、仕事以外で熱くなれるものをどんどん見つけていきたいと思う今日この頃です。