ぷかぷかドイツ日記

ドイツに移住したチンピラのぷかぷか日記です。

英語なんてどうでもヨッシー

 今勤めている会社はドイツ系なので、社員の中の日本人は私1人なのですが、私が入社した時にはもう一人技術顧問のような形でベテランの日本人エンジニアが在籍しておられました。この方は画像処理の分野で数々の業績を残し、業界では名の知れた優秀なエンジニアでした。私にとって大先輩にあたるその方は既にリタイアし日本に帰国されましたが、今でも付き合いが続いており大変ありがたい限りです。

 私が入社して間もない頃、そのDSP(大先輩)と話しているとき、ぽろっと英語に自信がないことを漏らしたことがありした。その時の返事が今でも私の頭にしっかり刻まれています。DSPは「英語なんてどうでもいい」と言いました。(すみません、どうでもヨッシーとは流石に言いませんでした。還暦過ぎてる方なので)

 会社の業務はローカルに閉じた部署でもない限り、そのほとんどが英語で行われます。メールも英語で書かなければ公式文書とみなされません。その理由はドイツ国外の企業とも取引する必要があるためですが、社員の構成を見てもドイツ人はせいぜい7割程度で残りはかなりインターナショナルです。(そのような訳で私の場合は仕事でドイツ語が必要になる場面はありません。)

 ドイツ人は英語ネイティブではないといえどもやっぱり母国語が英語に似ているため、かなり流暢に英語を話します。TOEFLを受けたら、おそらく社員のほぼ全員が余裕で100点オーバーでしょう。一方私は30歳から英語の勉強を始めて(それまでは底辺レベル)、それから3、4年結構頑張ってきましたがそんな程度じゃそもそも彼らにはかないっこありません。私が思うに、帰国子女のようによほど英語が堪能な人でもなければほとんどの日本人は、外資系企業のミーティング中には発言することをためらってしまうはずです。猛烈なスピードで英語が飛び交う中、その白熱している議論をさえぎって下手くそな英語をしゃべることになるのですから。周囲との強調を重んじる普通の日本人的マインドではこんなこと絶対不可能です。これが、私が入社して1番最初にぶつかった壁でした。

 一方DSPはまさに豪腕エンジニアと呼ぶにふさわしく、こてこてのジャパーニーズイングリッシュの発音で臆せず発言しいつもドイツ人をやっつけていました。DSPの発言の仕方は、「このくらいまでしゃべれば言いたいことがなんとか通じる」という絶妙の水準を保って話し続ける、といったイメージです(ドイツに10年以上住んでいらした方ですし、もちろん私に比べれば英語力自体も全然高いのですが)。私はDSPの話し方を見て英語力とコミュニケーション力は別物であるということを学びました。そしてそんな人が「英語なんてどうでもいい」と言ったから私にとって大きな説得力を持ったのです。今から振り返れば過去の私が細かな文法の知識を覚えたりしていたのは、随分とずれた勉強をしていたのだなと思います。DSPはそんなちまちましたことを吹き飛ばすように、時には身振りや表情で、時にはキーワードのみを投げるだけで、テンポよく会話するのです。実に見事としかいいようがない。(もちろんそれはエンジニアとしての実力に裏打ちされてもいるのですが)

 上記の学びに加え、近頃の私は自分を奮い立たせるための"勇気の言葉"を見つけました。それは「話す内容が1番大事」です(普通ですね)。ミーティング中にこの言葉を頭の中で呪文のように唱えて、覚悟が決まった時一気に発言を始めるのです。今から大事なことを話すから、俺の下手くそ英語をちゃんと聞け!って(笑)(←我ながら必死だなと思う)

 DSP曰く、昔私に似た人がいたようで、その人は韓国からインターンシップに来た学生で、卒業後はエンジニアとして入社することを希望していたそうですが、英語に不安があり入社する前に語学留学をするべきかどうか悩んでいたそうです。でもその学生は入社後やりたいことが既に明確になっていたようで、そこでもDSPは「そんなどうでもいいことに悩んでいるんじゃない!さっさと技術者になってやりたいことを始めろ!」と力説したらしいです。

 当たり前ですが人生における方法と目的があるなら、大事なのは目的の方です。短い人生の中で幸運にも目的を見つけられた人が、方法のためにわざわざ遠回りする必要はない。それがきっとDSPが言わんとしたことでしょう。目的が定まればボディランゲージでも絵を描いてでも何でもしてそれに近づけばいいのです。その際に英語をしゃべっても別に構わない、というだけのことです。

 矛盾するようですが、私自身仕事中にいつも歯痒い思いをするせいで、英語はやっぱり超重要で上手いに越したことはないと強く感じています。なので、今でも音読やリスニングなどのトレーニングは続けています。でも一方で「語学学習をするためにここに来たのではない」ということを頭の片隅に入れておくことも大事だと今は思っています。

 

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