脱力系ぷかぷかドイツ日記

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映画)ワイルドマン・ブルース__バーバラ・コップル__1998

ワイルドマン・ブルース (字幕版)

ワイルドマン・ブルース (字幕版)

  • 発売日: 2013/11/26
  • メディア: Prime Video
 

 

 この映画は単なるドキュメンタリーなので内容的には大したことはなかったが、僕はもともとウディ・アレンの(結構本気度の高い)ファンなので、彼の実生活における人となりが垣間見られる本作は貴重だ。移動中やコンサート会場、さらにはホテルの部屋の中までカメラがずっと彼について回るのだが、口を開けば冗談ばかり言っていて、映画の中の"俳優ウディ・アレン"と少しも違わないのがうれしかった。普段は気難しい人なんじゃないか、という勝手なイメージがあったので(笑)

 ウディ・アレンはニューヨークで生まれ育ち、映画制作の拠点も作品のテーマもそこでの生活に根差していることが多い。現在既に80歳を越えているのに未だに映画監督として現役を続けているのはすごいと思う。若い頃の彼は、大学に入っては例によっておふざけが過ぎて中退し、仕事を始めては精神を病み、といった具合で映画監督としての道を見つけるまで社会の中で上手く生きられない人だった。映画の中の登場人物もどことなく皆神経症的で、不器用に思い悩む人が多い。ウディ・アレンは、人が必死に生きようとすることと表裏一体の"滑稽さ"をあぶり出し、笑いに転じるのが得意なタイプの作家だと思う。きっとそれは彼自身がそうやって生きてきたからだろう。

 ウディ・アレンがまだ子供の頃、神経質な母親に毎日ぶたれ、ヘブライ語の学校に何年も通わされ(彼の両親は熱心なユダヤ教徒だった)、すっかりひねくれた少年はジャズと映画にのめり込んでいった。彼は映画監督になってからもクラリネット奏者としてバンド活動を続け、ニューヨークにあるジャズクラブへの出演を毎週月曜日、何十年にも渡って続けた。1977年に「アニー・ホール」でアカデミー賞に選ばれた時にも、授賞式をすっぽかしていつも通りクラリネットを吹いていたというのは有名な話だ。(もちろんこれは映画祭の賞レースに反感があったからで、本ドキュメンタリーの中でもそれがいかに無意味なものか熱く語っている)

 僕は大学生のときに「スリーパー」を観た時、ウディ・アレンの映画はできるだけちゃんと観ておいた方が良い、と思った。その後長い時間をかけて、多作家として知られる彼の膨大な作品ラインナップを追いかけた。(僕の世代では珍しいと思うけど)ほとんど全て観たと思う。 僕が特に好きなのは、、

・スリーパー (1973)
・アニー・ホール (1977)
・マンハッタン (1979)
・人生万歳!(2009)
・マジック・イン・ムーンライト (2014)
あたりかな?
 
 彼は70歳を過ぎても1年に1本のペースで映画をとり続けているのがすごい。しかも作品もすごく良くて、個人的に50代60代のものよりも好き(上のリストの下2つも70代の作品)。彼は「思春期に見た景色を作品にしたい」と言っていたが、歳をとってもその映画魂は全く衰えていないように感じる。