脱力系ぷかぷかドイツ日記

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映画)記憶にございません!__三谷幸喜__2019

 政界の悪しき慣習に染まりきったダメダメ総理が記憶を失ったことを契機に、世間体や人間関係のしがらみから解き放たれ、国民のための誠実な舵取りをするべく人生をやり直していく話。脚本にはもう一捻り欲しいところもあったが、テーマがすごく良い。最低最悪の事態に追い込まれてようやく本当にやりたかったことをやる覚悟が生まれる、というのは大いに分かる気がする。悪の中枢である官房長官と対決する前に、もう何も失うもののない総理が「僕は怖くない」と言うシーンにとても共感した。あと、黒澤明の『生きる』という映画を思い出した。あれもめちゃめちゃ良いです(市役所勤めの公務員が癌になり、余命が短いと知らされたことをきっかけに、惰性で続けてきたそれまでの仕事ぶりを反省し変わろうとする話。)

 芸能関係の人は国絡みの仕事のオファーに影響するのを恐れて、政治に言及するのを避けることが多いと言われるが、三谷幸喜は例外だろうか。明らかに安倍内閣を揶揄するようなシーンもあった。こういう映画がくすぶっている政治家の心に火をつけたりしないのかな(うーん、意外とあるかもしれない)

 三谷幸喜と聞いて思い出すのが、以前彼がラジオにゲスト出演したとき視聴者から寄せられた「良い俳優ってどんな俳優だと思いますか?」との質問に対し、「スタッフに気に入られる俳優」と答えたこと。彼曰く、結局仕事をくれるのはスタッフなんだからそっちを楽しませるような演技をしなくちゃ、とのこと。映画を見てるお客さんを喜ばせたってなんの得もないから、って(笑)

 監督がそんなこと言ったんじゃ夢も希望もない(笑) ていうか、『記憶にございません!』の中で批判している国民を顧みない政治家達とほとんど同じ考え方じゃないか(笑)