本作はヴィム・ヴェンダースの結構最近(2015年)の映画で、 なかなか良かったです。
舞台はカナダの田舎町。ある日主人公は雪道を運転中に、 ソリに乗って飛び出して来た小さな子供を轢き殺してしまう。 それは実際タイトルの通り"誰のせいでもない"事故だったが、 その日を境に主人公はもとより、その恋人、 また事故で亡くなった子供の母親は絶望の中をさ迷うことになる。 心に深い傷を負った登場人物達が、 痛みを引きずって生きていくその後の12年間を描く。
僕はもともと「何かが永遠に続く」ということが怖い。 交通事故で子供が死んだら、加害者はずっと加害者のままだし、 被害者はずっと被害者のままだ。我々は一度起きたことはもう二度 と元には戻らない残酷な世界を生きていて、 そしてそんな不幸な出来事に限って何の前触れもなく起きたりする ものだ。
人間関係でもそう。不用意に何かを言ってしまえば、 言われた側の心に永遠に影を落とすかもしれない。 本当に怖いのは人に自分が傷つけられることではなく、 自分が人を傷つけてしまう事だ。 この映画を見て改めてそう思った。
ちなみにこの映画の原題は『Every Thing Will Be Fine』と邦題とは違ってポジティブなもので、 登場人物達は長い時間をかけて絶望から這い上がり、 それぞれの人生を生きていく。その様も中々見ごたえがあります。
ヴィム・ヴェンダースは『パリ、テキサス』 を見て以来好きになった監督だが、彼がデュッセルドルフ出身とい うことは実は今日Wikipediaを見るまで知らなかった。 デュッセルドルフは古くから日本人コミュニティが存在する街で、 彼は小津安二郎のファンを公言しているし割に日本に馴染みが深い のかもしれない。
ヴィム・ヴェンダースは写真家としても活動しているようで、 ネットでちらっと見てみたらまるで自身のロードムービーに出てき そうな風景写真がいくつか出てきた。 ベルリンとかで写真展を開いているようなので、 いつか行ってみたいな~