『バッドマン』のヒール役である”笑う殺人鬼ジョーカー”が如何にして誕生したのか、その経緯を描いた作品。話題になっただけあって、ものすごかった。めちゃくちゃ残酷でびっくりした。。
主人公は売れないコメディアン。いつか大きなステージに立つことを夢見ながら、アルバイトの収入で暮らしている。彼の”人生の目的”は「人々に笑いと喜びを届けること」。しかしちょっとした不運が重なり仕事を解雇され、しまいには地下鉄内で揉め事に巻き込まれた際同僚からもらった銃で乗客を撃ち殺してしまうーー
ジョーカーの衣装デザインもアメリカの街並みも色彩が冴えわたっていて、とにかく映像がかっこいい。
アメリカの貧困層と富裕層の対立をテーマにした社会性の高い内容で、仕事柄ピエロの格好をしている主人公がそのままジョーカーの姿に変貌していく辺りはバッドマンの原作コミックとは異なったストーリーになっている。(原作で描かれるジョーカーの起源は、工場の中でバッドマンから逃げ回っている時に、化学溶液の中に飛び込むというもの。そして顔の皮膚がはがれ、口が裂け、あの顔になった。)
2012年にジョーカーに影響を受けた銃乱射事件が発生したせいで(オーロラ銃乱射事件 - Wikipedia)、本作も2019年の公開当時非常に警戒されたようだ。売れない道化師が社会から見捨てられ、狂気を抱いたジョーカーに顔も心も変貌していくというオリジナルのストーリーは社会への問題提起なのだろう。実際本作でも、爆破予告が届いたために上映中止となった映画館もあったらしい。物語の力というのは凄まじいものだ。