早いものでドイツに来てもうすぐ2年半。 今の会社に入社する前は日本人のいない環境でうまくやっていける か不安でしたが、 今年の業務も終了し無事に年を越せそうでほっとしています。
今日はこれまでを振り返って、ドイツ企業で働くメリットとデメリ ットをまとめてみたいと思います。(多分に私の主観が入ると思い ますが)
目次
私の経歴、今の会社
私は画像処理用半導体を開発するハードウェアエンジニアとして日 本メーカーで4年間勤務した経験があり、 その後ドイツの現地企業に転職したのですが仕事内容自体は日本時 代とほとんど同じです。ドイツに来た経緯は以前の記事でも書いてます。
daturyoku-pukapuka32.hatenablog.com
ちなみに今の会社は社員数が1000人よりちょっと多いくらいの電子機器
ドイツ企業の良い点
■残業なし、コアタイムなし
なんといってもこれは素晴らしい点です。 残業で疲弊している人など一人もいません。 日本時代私もご多分に漏れず残業地獄を経験したので、、 ドイツに来てよかったと毎日思っています。
またコアタイムもありません。そのため社員によって、1日のタイ ムスケジュールは大きく異なり、朝早く出社しランチ後すぐ帰る人 もいれば、午後から出社してきて夜まで働くタイプの人もいます。 (こういう会社は日本でも最近では増えてきているようですね。) 一応勤務時間は各人決められているのですが( 私の場合1日8時間)、 年の終わりの合計で辻褄が合えば良いので、 日によって何時間働くか自由に調整できるのも良い点です。
■職責の範囲が明確
これは当初戸惑った点でもあります。 日本では業務全体を見通して様々な提言ができるスーパーマンみた いな人が尊敬されているところがありますが、 ドイツでこれをやるのはNGです。 即刻他部署への職責侵害とみなされるからです。 かくいう私もミーティング中につい他グループの話題に口を出し、 「それはお前の仕事じゃない!」 と大声で怒鳴られたことがあります。。
でも自分の職責を全うしてさえいれば、 いかなる状況でも自分にクレームがつくことはないため、 心理的安全性は非常に高いです。自分の仕事が終わったら、 プロジェクトの状況などお構い無しで、皆さっさと帰宅します。 例えばプロジェクト全体に関わる問題が発生した場合、 各設計担当は「それはプロジェクトリーダーが判断すべきことだ。 私に責任はない」と放り投げてしまいます。一方プロジェクトリーダーも全体のすり合わせが必要なときに顔を出すのみ で、各設計マターに関しては設計者に決定権があります。 そのため日本企業で良くある、 マネージャーが承認するための出来レースのような会議はありませ ん。
■みんなフラット
年上年下は関係なく皆ファーストネームで呼び合っており、 上司と部下もフランクな関係です。 パワハラは見たことがありません。 社内派閥のようなものも一切ありません。 インターンシップの若いドイツ人大学院生が私のところに来て「 Hey, ランチに行かないか?」と誘ってきたりします。 とにかく皆フラット且つオープンです。もともと移民が多いため文 化の違いに皆が寛容なのも一役買っているのかも。
■転職しやすい
日本と比べるとドイツでの転職の敷居は低いです。 ドイツでは人材の流動性が高く、 転職回数はほぼ問題になりません。 逆に一度も転職したことがない人は、 キャリアアップに対する向上心や経験値が低いとみなされ、 転職時にマイナスの評価となることさえあります。
一緒に仕事をしていた40代のプロジェクトリーダーが退職すると いうことだったので「次はどこの会社に行くの?」と聞いたら「 さあね。しばらくゆっくりしてから次の職を探すよ。」 とのことでした。 長旅等してリフレッシュしてからまた働くのでしょう。当初は「 結構のんびりしてるな」と驚きましたが、 40代でこういうノリの人もいるのです。また、 数年おきに会社を転々とするスタイルも普通のようです。 ランチの時にも皆オープンに転職について話しています。
ドイツ企業の悪い点
■すぐクビになる
パフォーマンスが悪い社員はすぐにクビになります。 これは本当にやばいです。。クビを免れたとしても降格処分です。 特に給料の高い重要ポジションは頻繁に人が入れ替わっている印象 です。私が入社した当時の開発部長は解雇され、 課長は降格となったため、 結果私の上司は既に全員入れ替わってしまいました。 特に開発部長とは今後のビジョンについて語り合っていたのですが 、私が入社して間もなくの解雇でした。採用面接の時から、無事に入社できたら一緒に頑張ろうぜって盛り上がっていたのに。。
このようなことが頻繁にあるので気が抜けません。 私はここで生き残っていくために、 上司や同僚に向けて自分のビジョンやアイディアをどんどん発信す ること、 自分のパフォーマンスをアピールすることを心がけています。( ある人が私に言った言葉ですが、ドイツでは"遠慮"は即"無能" を意味するとのこと)
■移民は出世しにくい?
他の会社ではどうなのか分かりませんが、 私の勤めている会社では少なくとも今のところは役職者は全員ドイ ツ人で占められています。移民は会社を辞める確率が高いので、 当然といえば当然のことかもしれません。
■ドイツ語の壁
私はドイツ語は未だ勉強中の身ですので、 仕事中は英語を話します。 同僚も皆英語が話せるので基本的に問題ないのですが、 ドイツ語ができるともっと楽になるのになぁと思う場面もしばしば あります。
例えばドイツ人でも英語に苦手意識がある人は一定数おり、 そういう人達は私へのコンタクトを避けようとします。 私に直接訊けば良いことを人づてに訊いてくるので、 話が混乱することも。(そのような人達は、私に対して「あいつ、 さっさとドイツ語勉強しろよ」と思っているでしょうね。しかし、 そんなにさっさとはできない。) また社内ローカルなドキュメントはドイツ語で書かれていることも あり、 いちいちGoogle翻訳で読まなければいけないのも結構面倒で す。
■職種の変更は難しい
転職は容易な一方で、職種の変更は難しいです。ドイツ企業では、 たとえ新卒社員でも入社した段階ですぐに即戦力として期待されま す。逆に言えば、 求められる分野での職歴や学歴がなければはなから雇われないとい うことです。日系企業のように、 畑違いの分野からの新卒を雇ってOn the Job Trainingで育てるというような発想はありません。
ドイツ式の方が世界的に見ればスタンダードなのですが、 少々堅苦しくもあります。未経験での就職は不可能ですし、 社内でもキャリアチェンジのための部署異動はほぼ見かけません。 また、Job Rotationにより他部署の仕事を経験させるような仕組みも ありません。 ドイツで働くなら学生時代から専攻を慎重に決めないといけないの です。この辺は日本とは大分意識が違いますね。
メリットとデメリットのまとめは以上です。
おまけ 海外就職の役に立つ本
ちなみに私が海外就職をする際に参考にしたのがこの本です。
この本は基本的にアメリカ企業への就職を目指すソフトウェアエン ジニアに向けて書かれたガイドですが、 海外就職を目指す多くの方の役に立つ内容だと思います。 特に英文履歴書の書き方やLinkedInの使い方、 面接の突破方法等の情報はとても有益です。