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本)いちばん親切な西洋美術史__池上英洋__2016

いちばん親切な 西洋美術史

いちばん親切な 西洋美術史

  • 作者:池上英洋
  • 発売日: 2016/07/15
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 一冊で古代から現代まで西洋美術史を概観できる本。読みやすいので入門用におすすめ。絵がたくさん載っているので、ただ眺めているだけで楽しい。

 どの時代も面白いけど個人的には19世紀後半から現代に至るまでが特に面白かった。まず印象派(モネ等)が登場し、後期印象派(ゴッホ等)、キュビスム(ピカソ等)、象徴主義(ムンク等)、ダダイスム(デュシャン等)など様々な様式が生まれ、さらにシュルレアリスム(キリコ等)みたいなところまで到達する辺り。

 産業革命や世界対戦等が起きた激動の時代に、人間が尊厳を守るために芸術を武器に闘ってきたことが良く分かるそもそも印象派も、当時の美術界を牛耳っていたアカデミスムに反発したアウトローな画家達が立ち上げたものだ。

 偉大な芸術家達の人となりに触れられたのも良かった。ゴッホはゴーガンとの対立で精神的に追い詰められ自分で耳を切り落とした。キュビスムとフォーヴィスムの先駆けとなったセザンヌはずっと世に認められず極貧で、50代に入る頃まで実家から仕送りをもらっていた。20世紀彫刻への道筋を作ったロダンは、美術学校の入試に3回連続で落ち、受験資格すら失ったような人物だった。モネは白内障を患っても、絵を描いた。

 皆ほとんど狂っているといっても過言ではない。芸術に対する自分の信念を貫くために、言葉通り命を懸けている。

 面白かったのが、シュルレアリスム(超現実主義)の実験としてフランスの詩人ブルトンによって提唱された自動記述(オートマティスム)の話。これは構想することなくいきなり文章を書き始めるという発想で、ブルトンは半分眠りながら文章を書いたり、内容を無視して異常に高速で書いたりと、いろいろ実験をしたらしい。そうすることで普段の倫理観に縛られることなく無意識下にあるものを引き出すことができるそうだ。この人も狂ってるね(笑)