脱力系ぷかぷかドイツ日記

省エネぬくぬくドイツ暮らし

ヘッセン州の田舎町でデジカメの開発してます

本)パッキパキ北京_綿矢りさ_2023

 

 

Xで吉本ばななが勧めていたので、読んでみました。

 

金目当てで年上男性と結婚した36歳元ホステスが、北京で単身赴任中の夫と一緒に暮らすために中国に渡り、明るくテキトーに生きていく話。

 

小説なので基本的にフィクションなんですが、北京の生活の描写はかなり詳しく、現実に沿って綿密に書かれています。著者自身の中国滞在経験を生かして書かれたということです。駐在等でこれから中国に行かれる方は事前に読んでおくと、何よりも良いガイドブックになるかもしれません。

 

作中では主人公の精神的なタフネスにフォーカスされています。彼女は中国語も話せないし、現地に夫以外の知り合いがいるわけでもないのに、朝から晩まで遊びまくって楽しんでいるわけです。ローカルのレストランに一人で入っていったり、現地で知り合った大学生カップルと翻訳アプリで会話しながら小旅行に出かけたり。。。この明るさ、神経の太さに読者が元気付けられるような小説です。

 

あと、魯迅とかいう中国の作家が小説の中で書いた「精神勝利法」の話がしきりに登場しますが、これをどう思うかですね。

以下、本文より引用↓

例えばすごく努力して何かの分野で一流で、人気もあって金もある、性格も良いしモテる男が「いや、僕なんかまだまだ。僕よりもっとすごい人なんて、この世にたくさんいますから」と謙遜じゃなく心から思ってて、日々努力して研鑽してるとしたら、残念ながらそいつは完敗している。「私って負けず嫌いなんです」とか言いながら食事も快楽も節制して誰よりも美しくて、ろくに休まず社会で活躍してる人間も、かける言葉も無いほど痛ましい人生の敗者だ。素の自分を、いつまでたっても認めてあげてないからだ。

反対に自他共にどうやっても認めざるを得ないほど社会の底辺に属してて、毎日イヤなことや辛いことがひっきりなしに起こってても、そいつがニヤニヤしながら「おれは敵などいない。全知全能の神だ」と心から言いきれるなら、こいつはもう、完全に勝利している、一番偉く、一番進化した、一番コスパの良い人類だ。

 

これ僕は一理あると思いますね~ 現代人が忘れかけているメンタリティだと思います。