2024年ももう終わりですね。
今年話題となったニュースに、「名目GDP世界3位だった日本がドイツに抜かれ4位に転落した」というのがありました。このニュースがきっかけとなり、日本のメディアでドイツ人の働き方がしばしば取り上げられていましたよね。
それによると「ドイツ人は残業をしない(生産性が高い)」とのこと。
本当か?
この点について、ドイツ企業勤務7年目の僕が自身の経験を踏まえてまとめてみます。
目次
Q:ドイツ企業に残業はあるか? A:(ほぼ)ない
ドイツでは残業はほぼ無いです。勤務上限は一日8時間まで。休日出勤も無し。めっちゃ最高!(例外的に残業が発生する場合もごくまれにあるにはあるのですが、それについては後述します。)
僕は日本の長時間労働に疲れ果てて海外に脱出した人間なので笑、僕からするとドイツは天国です。日本時代に比べると仕事はものすごく楽です。日本時代は名の知れた大企業でエンジニアとして今と同じ仕事(半導体の開発)をしていましたが、労働環境に関しては公平な目で比較して、どう考えてもドイツの方が日本より断然良いです。
特に日本の管理職で長時間労働+残業代無しのダブルパンチで苦しんでいる人たちはドイツに来ればいいのに。ドイツではマネージャー達も残業してませんし、年30日の有給休暇をフルに取得しています。それでいて技術系社員なら待遇は日本企業より厚いので、管理職の給料を時給換算すると日独で相当差がつくはず。。
では、ドイツで残業が無いのは何故か?
あくまで僕の経験に基づく個人的見解ですが、以下のような理由が挙げられると思います。
残業が無い理由① マネージャーに残業を強いられることが無い
ドイツ企業ではマネージャーの権限はそれほど大きくなく、やっていることは文字通りマネージのみです。つまり仕事のアサインや全体のすり合わせです。日本企業によくいるような独裁的に権力を奮うマネージャーはドイツでは見かけません。
個々のタスクに関しては各担当者に決定権があり、タスクの進め方については担当者の裁量に委ねられています。そのためマネージャ(上司)が部下に指導や説教の類をすることはありませんし、まして残業を強制することなどあり得ません。問題が起きた時にサポートをする程度です。
また、日本でよくある上司の承認を得るための出来レースのような会議はドイツでは一切行われません。
残業が無い理由② スケジュールは遅れても良い
ドイツ企業では担当者の進捗が遅れている場合、躊躇なくスケジュールを遅らせます。残業で無理やり間に合わせるようなことはしません。そもそも市場への商品リリースが遅くなったところで誰も困らない、という共通認識があるようです。
うちの会社の場合、商品リリースが当初の予定より何年も遅れることは珍しくありません。スケジュールより、商品の完成度や品質を追求するわけです。
残業が無い理由③ 迷惑はかけあう文化
取引先や開発パートナー企業から期日を過ぎても成果物が出てこなかった場合、日本企業だと厳しく追及しますよね?ドイツではそんなことはしません。優しく許してあげます。(早くしろよ、的な文句をチクっと言うことはありますが笑)
なぜなら、それはお互いさまだからです。ある場合には、こちら側が遅延を起こすかもしれませんし。そうなった時のために取引先の遅延を責めないのです(笑) ドイツでは「迷惑はかけあうもの」との共通認識があるようです。
残業が発生しない理由として、これも大きいですね。取引先との約束を守るために死に物狂いで残業したりすることはありません。
残業が無い理由④ どうでもいい仕事は自然に消えていく(笑)
どうでもいい仕事とは、「時間がかかる割にリターンの小さい仕事」のことです。こういった仕事に対しては「今はひとまず後回しにしよう」という空気が流れた後、皆が口裏を合わせたように誰もその件に触れなくなり、そのまま忘れ去られていきます(笑)
これは一見不真面目なように見えて、実は残業を減らし生産性を高めるために重要なことなんです。
「ひとまず後回し」にして先に進めば開発プロセスのどこかで放置した問題が指摘されることもあれば、されないこともある。もし指摘されたら、その時に問題と改めて真摯に向き合えば良い。きっとその時点では当初より開発が進んでいるため、問題がより具体的になっているので簡単に片付く。
100%の完成度を目指すのも大事ですが、皆が限られた時間の中で業務をしているのですから、このような割り切りも時に重要でしょう。(僕の感覚だと、日本人がまさに苦手なのがココ)
残業が無い理由⑤ 有給休暇は聖域
ある同僚によるとドイツ人にとって「有給休暇は聖域」らしいです(笑) 休み中に電話がかかってきて緊急対応をお願いされる、等ということは絶対ありません。もしドイツ人にそんなことをしたらブチ切れるでしょうね(笑) マネージャですら、休み中は完全に音信不通になります。
しかし、たま~に残業が発生するときもある
これまで何度か(両手で数えられる程度ですが)、残業になったことがあります。
でもそれはかなりイレギュラーなケースです。
例えば
・急に出張が決まり準備をしないといけなくなった時や、
・会議の資料作成が必要になり、絶対間に合わせないといけなかった時
等です。
まあ、こんなことはどこの国のどんな会社でも、あるでしょうね。。。
おまけ アメリカ企業だと残業あるっぽい
ちなみにアメリカのTEC企業(のドイツ支社)から転職してきた同僚エンジニアの話によると、彼は当時アメリカ人上司と毎日夜10時ぐらいまで働いていたとのこと。このような話はちらほらと聞くので、アメリカ企業だと残業あるっぽいですね。