脱力系ぷかぷかドイツ日記

脱力系ぷかぷかドイツ雑記帳

ヘッセン州の田舎町でデジカメの開発してます

クリスマスマーケット

 私が勤務している田舎町でもクリスマスマーケットが始まり、一昨日同僚達と一緒に行ってきました。その名の通り飾り付けられた通りに様々な出店が並ぶのですが、ドイツ人がやることと言ったらクリスマスでも特に変わることはなく、酒を飲みながらだらだらと話をするだけです。ドイツ人はとにかく話好きで、それも外で酒を飲みながら話すのが好きなようで、夏はビアガーデンに昼ごろやってきて、隣に座った知らない人とそのまま夜まで話続けます。(この町は田舎だから、特にそのような傾向が強いのかもしれません)。一昨日も大勢の人で賑わっており、その多くが外で飲んでいました。ここ数週間で大分冷え込んできていて息が白くなるほど寒いのにも関わらず、頑なに外です。設備としては風よけのテントがぽつぽつとあるくらいのものです。この時期の名物となっているのがグリューワインと呼ばれる香辛料を加えた温かい赤ワインで、普通のワインより度数も少し高いらしく、飲んでいるうちに体がぽかぽかとしてきます。これを飲みながらひたすら寒さを無視し続けるのです。一方で、この寒さこそがこのイベントの魅力の一つでもあると感じました。会場全体に装飾用電球がたくさん取り付けられており、金色の光が乾燥した空気の中でシャープに飛び交い、パソコンの見すぎで疲れた目には、はっとするほどにきれいで、グリューワインが回った頭は終始ぼおっとして(4杯飲んだ)、温かいやら寒いやら(4時間も外にいたらさすがに寒かった)、とにかく夢を見ているような気分になるからです。

 今週は取引先の日系半導体企業からエンジニアの方々に職場に出張に来て頂いていたため、クリスマスマーケットにもお誘いし、彼らと腹を割った話ができました。出張メンバーの中には現在市場を席巻しているあるLSIのまさに生みの親(の一人)である経験豊富なエンジニアもおられました。彼がぽろっと、日本メーカーが海外に工場を手放してきたことは長い目で見れば致命的な失敗だ、これから日本の技術は落ちていく、と言ったことが印象的でした。私も同意見です。製造現場から離れると、エンジニアにとってデバイスがブラックボックス化していくのです。その反面、一つのデバイスに詰め込む機能は多様化・複雑化し、設計者の仕事は増える一方です(彼が設計したLSIは今や、その仕様書は8000ページを超えている!)。設計者は仕様の理解に追われ、頭の中だけでものをつくり、手を動かさなくなっていきます。驚くべきことに半導体企業といえども若手設計者はクリーンルームに入ったこともない人がほとんどらしい。もう今はそんな時代です。

 出張者の一人に、何故ドイツに来たんですかと聞かれたのですが、この質問には毎度うまく答えられず、困ってしまいます。外国の小さな町で一人で働いて暮らしていくことに本当はどんな意味があるのか。そんなことやってみなきゃわからないと思っていましたが、やってみても分かりませんでした(笑)。ただただ静かで何もない毎日が過ぎていくだけです。不安や感動や興奮とは無縁です。そして持て余すほど、時間に恵まれています。まだこっちに来て4か月ですが、全てがスローな自分の性格には合っているのかもしれません。手ごたえを得るためにもっと長い時間が必要、という気がします。

 来年一月には日本出張を予定しており、楽しみです。久しぶりに日本に帰れるということもありますが、取引先の方が大相撲観戦に招待してくれるらしいからです(笑)

 

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