ぷかぷかドイツ日記

脱力系ぷかぷかドイツ日記

2018年7月にドイツに移住したチンピラのぷかぷか日記です。

映画)港町__想田和弘__2018

minatomachi-film.com

 

 岡山県牛窓の日常を綴ったドキュメンタリー。高齢化の進む港町での人々の暮らし、美しい海や空、町並みをモノクロの映像で描いている。BGMもなく静かな割に、強い印象が残る映画だ。

 想田和弘は自らの作品を「観察映画」と呼び、その方法論を実践しているドキュメンタリー作家だが、彼が掲げる「観察映画の十戒」はとてもユニークなものだ。(個人的に6番がすばらしいと思う)

(1)被写体や題材に関するリサーチは行わない。

(2)被写体との撮影内容に関する打ち合わせは、(待ち合わせの時間と場所など以外は)原則行わない。

(3)台本は書かない。作品のテーマや落とし所も、撮影前やその最中に設定しない。行き当たりばったりでカメラを回し、予定調和を求めない。

(4)機動性を高め臨機応変に状況に即応するため、カメラは原則僕が一人で回し、録音も自分で行う。

(5)必要ないかも?と思っても、カメラはなるべく長時間、あらゆる場面で回す。

(6)撮影は、「広く浅く」ではなく、「狭く深く」を心がける。「多角的な取材をしている」という幻想を演出するだけのアリバイ的な取材は慎む。

(7)編集作業でも、予めテーマを設定しない。

(8)ナレーション、説明テロップ、音楽を原則として使わない。それらの装置は、観客による能動的な観察の邪魔をしかねない。また、映像に対する解釈の幅を狭め、一義的で平坦にしてしまう嫌いがある。

 

(9)観客が十分に映像や音を観察できるよう、カットは長めに編集し、余白を残す。その場に居合わせたかのような臨場感や、時間の流れを大切にする。

 

(10)制作費は基本的に自社で出す。カネを出したら口も出したくなるのが人情だから、ヒモ付きの投資は一切受けない。作品の内容に干渉を受けない助成金を受けるのはアリ。

引用元:想田和弘 | Kazuhiro Soda

 

 そもそも『港町』の映像は、映画にするつもりで撮られたものではなかったらしい。想田監督が別の用事で牛窓に行ったときに回していた動画にいろいろな偶然が重なって素材が揃ったため、後から映画化が企画された。そのためか事前に計画された場合撮影を省略するであろう人々の生活のディティールが映り込んでいて、この作品独自の魅力になっている。

 例えば朝魚屋の営業準備の様子をずっと撮っているシーン。手際よく魚の下処理(内臓抜き等)が為され、パック詰めされ、店頭に並んでいく。こんなものどこにでもある光景なのだろうが、なぜかもの凄く心動かされてしまう。