脱力系ぷかぷかドイツ日記

脱力系ぷかぷかドイツ雑記帳

ヘッセン州の田舎町でデジカメの開発してます

同僚のおっさんがカミングアウトかましてきた

同性愛者であることが既に周知されている人にならこれまでにも会ったことがありましたが、異性愛者として生きてきた人の”カミングアウト”の現場に遭遇したのは今回が初めてでした。

 

その方は同じ部署の50代のドイツ人の同僚(Aさんとします)で、それまで普通に男性として働いていました。

ところが、ある日突然Aさんのメールアカウントのファーストネームがこれまでとは別のものに変わったのです。あれっ、どういうことだろう?とその時は訳が分かりませんでした。ですが僕は在宅勤務のことが多いので、Aさん本人にも顔を合わすことが少なく「まあいいか」と謎をそのまま放置していました。今年の夏ごろの話です。

 

そして後日出勤したとき、オフィスの通路でAさんとすれ違った時すべての謎が解けました。これまでは男性の格好をしていたAさんが、女性用のワンピースを着ていたのです。まじで脚色なしでグザヴィエ・ドランの『私はロランス』ばりの変身です。その時僕は内心ものすごい衝撃を受けていたけれど、Aさんに特に話しかけたりはせずただHelloと言って通り過ぎました。

 

あの時余計なことを言わなくて本当に良かった。。Aさんの立場になってみると周りがいつも通りでいてくれることが一番うれしいでしょうから。

「あれっ、どうしたの?素敵だね」とか何か言おうか一瞬迷ったけれど、でもそれをどういう表現で言うべきなのか分からなくて何も言わなかっただけなのですが、結果的に正解だったように思います。

 

そして感動したのがその後の会社の対応。ミーティングやメールでAさんに言及する場合、Mr.はMs.になり、HeはSheにすぐさま変わりました。男性だった時代のAさんのプロフィール写真は削除され、新しい画像に変わりました。

逆に上記以外は何事もなかったかのように全てがこれまで通りです。周りの同僚のAさんに対する接し方も全然変わりませんし、Aさんの変化について誰かが何かを言っているのも聞いたことがありません。

 

この辺りはやはりドイツ企業の素晴らしい点ですね。LGBTQに対する理解が浸透していることを今回の件で強く感じました。おそらく多くの同僚が同じようなことを過去に経験済みなのでしょう。皆落ち着いていましたね。

 

そしてAさんのカミングアウトから現在まで数か月が経過したのですが、もう僕自身Aさんと会っても自分でも驚くほど何も感じなくなりました。人間の慣れってのはすごいですね。。

あとAさんが周りに馴染んでいるのは、女性の格好がとても似合っているというのもありますね。もともとAさんはハンサム&長身&細身という50代にしては綺麗な男性だったので。髪型や服はもちろん、ネイルやイヤリング等のアクセサリーまで、すみずみまで女性ですが、全く違和感がない。なんなら男性だった時より輝いて見える(笑) 

 

Aさんには聞けませんが50代になってカミングアウトをしようと思ったのは、どのような心境の変化があったのでしょうかね。

 

ドイツでは同性婚は合法、LGBTQに対する理解は日本と比べても進んでいるでしょう。元ベルリン市長が2001年の市長選前の演説で自身がゲイであることをカミングアウトしたというすごい話もあります。その際言い放った言葉「私はゲイである。それもまたよし!」はその後流行語になったらしい。

 

しかしキリスト教関連団体は基本的に同性婚に反対の立場をとっています。差別もまだまだあるでしょう。ドイツといえどもカミングアウトにリスクがあるのは事実です。

 

Aさんの場合ある程度の年齢になって、心の中で何かが吹っ切れたのでしょうかね?それとも仕事や生活の基盤がある程度整うまで時期を見計らっていたのでしょうか(Aさんには息子がいると聞きました。きっとそのことも関係があるでしょう)。もしくは親族にキリスト教の団体に属している人がいて、言い出せなかったとか?

このあたりの真相はわかりませんが、いずれにせよカミングアウトすることはとてつもなく勇気のいることだったでしょうね。。