著者のものすごい知識量と取材力に脱帽の一冊。カメラの技術的な話だけでなく、20世紀の光学産業の歴史を知るうえでも非常に良い本です。
一つ注意点はバルナックライカと初期M型ライカ、つまりフィルムカメラの話がメインです。デジタルライカのことももっと出てくるのかと思ってましたが、そこは残念。
とはいえ、一眼を使っている人なら(必ずしもフィルムカメラを使ったことがなくても)楽しい内容だと思います。
以下のことが良く分かります。
・ライカが単なるカメラではなくファッションアイテムになった背景
・戦争でどのようにライカが使われたのか
・ライカとコンタックスの激闘の歴史(←ここまじくそ面白い)
・ライカが日本のカメラに与えた影響
この本を読んで面白いと思ったのが、ライカの生みの親であるオスカー・バルナックが学位を持った技術者ではなく、言ってしまえば単なる”職人”だったという点。バルナックだけでなく、「ハンザ・キヤノン」でカメラ大国日本の最初の一歩を踏み出した吉田五郎も同じく職人で、二人は共通して図面すら引けなかったとのこと。
さらにソニーのミラーレスユーザーならおなじみツァイス”ゾナー”レンズを設計した天才ルートビッヒ・ベルテレも学歴がなく、当時ゾナーは他の追随を許さない怪物のような光学性能を誇ったにもかかわらず、学歴社会のツァイスでは出世できなかったそうです。
なんかことごとくこういう人達ばっかり出てくると、とてつもなく秀逸なアイデアマンって、割と学術的なことを勉強してこなかった人が多いのかもな、とか思ってしまいますね。スティーブ・ジョブズも似たような感じかも?
そういえばiPS細胞の山中教授も「深く知りすぎなかったから、逆に常識外の方法でiPS細胞を発見できた」とどこかで言ってましたね。。これってかなり大事な気がします。