脱力系ぷかぷかドイツ日記

脱力系ぷかぷかドイツ雑記帳

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本)本音で対論! いまどきの「ドイツ」と「日本」__マライ・メントライン他__2021

 

 

マライ・メントライン、池上彰、増田ユリヤの3名による対談形式で、日本とドイツを比較しながら社会や経済の問題について切り込んだ本。

 

日独の働き方の違いから、教育、社会保障、政治、環境問題への取り組み、コロナ禍の日独政府の対応まで、偏りなく公平な議論が展開されてます。この手の本にしては、かなり良い内容だと思いますね。ドイツに住んでいても知らなかったことも多かったです。

 

池上彰、増田ユリヤ両氏はさることながら、マライ・メントライン氏も鋭い知性を持った方ですね。。この方は日本在住のドイツ人で、翻訳やエッセイストなどとして幅広く活躍されているらしいですが、日本語ネイティブでもないのに日本人顔負けの難しい熟語をいきなり使ってきます(笑)

 

以下、ざっくばらんな感想。

 

まず印象的だったのは日独間の教育に大きな違いがある点。ドイツの学校での評価は、授業中の発言量と質によって決まるらしく、テストの結果は補足程度に過ぎないらしいです。なので、授業で発言しない人はその時点で好成績は得られないとのこと。(寝ている奴は一瞬で落第)

 

そして、授業の進め方も徹底的にディベート形式。大学入試も全部論述式。マークシートなんてものは存在しない。これはとにかく論理的に考える力と人に伝える力を重視しているからです。日本のように、1つの決まった正解にたどり着くようトレーニングする教育とはコンセプトが全く違います。(それゆえドイツには、塾はないらしいです。)

 

ドイツ人には議論が好きな人が多いなと感じていたので、納得がいきました。でもこんな教育のやり方じゃ、理数系は育たないのでは?と思いますがドイツって科学技術にも強いんですよねー、、この点は不思議です。

 

 

それから日独間で社会参加の意識にも大分差が在るようです。

有名な話ですが、ドイツの大学は無料です。医療費も無料。子育て支援も日本とは雲泥の差です。でも、当たり前ですがその分税金も高いです。なので、ドイツ人は皆で子供を育てているという意識を持っている。納税者であることに誇りがあるんですね。この辺がいかにもヨーロッパらしいところです。

 

一方日本は税率が安くアメリカ型資本主義に近い。金持ちには良い国ですが、その分社会保障はショボいのです。そういう国では、他人の子供のことになんて関心を持たない。どの家庭も「うちの子さえ良ければそれで良い」と考えるようになるんですね。

 

本書で紹介されていたエピソードですが、ある女性の東大生に「大学卒業後は何をするんですか?」と尋ねたらしいんですね。そうするとその女性は、「大学卒業後は専業主婦になって、母がしてくれたように自分の子供に良い教育を受けさせたい」と答えたらしい。

 

これがいかにも日本的ということらしく、ドイツで同じことを言ったら馬鹿にされるらしいです。「国立大学には国の税金がたくさん投入されているんですよ!? あなたはそのおかげで勉強をさせてもらえたのに、大学で学んだことを全く社会に還元しないのですか!?」って(笑) この辺の感覚は日本人にはわかりにくいだろうなあ。。

 

 

LGBTQのジェンダー論や環境問題への取り組みでは、ドイツは先進国とみなされていますが、それが行き過ぎて生きづらくなっているという話も興味深かったです。

 

例えば、ドイツでは「環境にやさしい家庭用電力プランを選択している」ということが一種のステータスになりつつあります。普段の会話の中で、「あなたの家庭はどの電力プランにしているの?」とか普通に聞かれるらしく、そこで原発の割合の高いプランを選んでいたりすると恥ずかしくて言えなかったりするらしい(笑) つまり環境問題が、”意識高い系”の人達がマウントをとるための道具になっているわけです。

 

最近良く話題になるビーガン(完全菜食主義)にしても同じ。普通のベジタリアンと比べて環境にやさしいという点で、ビーガンがステータスになっているのです。(日本でも芸能人とかインフルエンサーがファッション感覚でビーガンを名乗ってますよね。)ゲイの友達がいることをアピールしたがる人達も同じ心理です。自分の先進的な時代感覚をアピールしたいわけです(笑)

※もちろんそうじゃない人もいますが

 

マライ・メントライン氏が何度もこの”意識高い系”の人たちの話をするので、多分ドイツの最近の風潮に相当うんざりしているんだろうと思います(笑) でも、意識高い側への同調圧力が強まれば、結果的にジェンダー問題や環境問題は改善されていくのだから、良いことと言えば良いことですよね。。。(笑)

 

 

とまあ、思い付きで適当に僕の感想を書きましたが、本書で扱っている話題はもっともっと多岐に及んでいるので、興味のある方は実際に本を手に取ってみてください。