脱力系ぷかぷかドイツ日記

脱力系ぷかぷかドイツ雑記帳

ヘッセン州の田舎町でデジカメの開発してます

映画)ブルー・マインド__リサ・ブリュールマン__2018

ブルー・マインド(字幕版)

ブルー・マインド(字幕版)

  • 発売日: 2018/12/04
  • メディア: Prime Video
 

 これ結構面白かったです。ぶっとんだストーリーにもかかわらずシリアスに徹して描いているせいで、何とも言い難い奇妙な雰囲気が立ち上がっている。スイスの映画だと聞けば、「あー、なるほど」という感じかもしれない。オランダの『ムカデ人間』といいヨーロッパのホラーは訳が分からないのが多いね(笑) グロいシーンも多いが映像美に引き込まれるようにして観た。"変態"が完了するシーンは度肝を抜かれるので注意。

 

 成長期に自分の体がどんどん変わっていくあの恐ろしい感じをぞわっと思い出した。

我が人生最高のガッツポーズ(駄)

 また1つ大きな失敗をやらかした。今度はオーナーと揉めてアパートを追い出されることになった(笑) 良かれと思ってやったことが裏目に出てしまった。もう数週間前の出来事なんだけど、その日は去年車でぶつけた時と同じくらい落ち込んだ。ドイツに来てそろそろ2年。生きるのが下手なのはどこに住んでいても変わらないみたいだ。
 
 こんな時、どのように再び立ち上がればいいのだろうか。その夜沈んだ気分の中で、本田圭佑が"失敗"に対する考え方を語った時の言葉を思い出していた。
 
 彼は監督を務めているカンボジアの選手達に「プレー中に失敗したらガッツポーズをしろ」と教えているらしい(笑) どう思われるかとか考えるな、俺の方を見て絶対ガッツポーズをしろ、と。これはミスを怖がってトライしない選手達のマインドを変えるために思いついた方法らしく、彼が言うには「失敗して、上手くいかない事が分かった事に価値がある」ということだ。
 
 また本田圭佑はある時こんな奇妙な事も言った。
「超一流のスター選手ほど時折信じられないような凡ミスをする」
 天才的なプレーヤーというのは自分の勘や決断に自信を持っている。針の穴を通すようなシュートコースでも、一切迷う事なく自分を信じて思いっきり振り抜く。でも彼らはその際、あまりの集中力の高さ故に稀に初歩的な思い違いがあっても気が付かないのだ。大袈裟に言えば自分が攻めるべきゴールと反対のゴールにシュートを放っているとしても。そしてそもそも会場を湧かすプレーというのは失敗した時の代償も大きい。つまりスーパープレーはミスをするリスクとのせめぎ合いのなかで生まれるのである。
 
 そう、俺はわざわざ本田圭佑の言葉を持ち出して、今回自分がやらかした失敗を必死に肯定しようとしているのだ(笑) あの日の事を振り返ってみると、少なくとも俺はミスを恐れずに思いっきり攻めた。その瞬間はメッシやロナウドに匹敵するほどのファンタジスタだったはずだ。そしてその結果、(たまたま偶然)神経質なドイツ人オーナーの怒りにふれ、強制退去を告げられただけのことだ。ガッツポーズ以外に何ができるだろう?
 
 失敗してくよくよするなんて馬鹿馬鹿しい。ていうか、海外に住み始めて早々に衝突事故と強制退去の両方を経験した奴がどこにいる?これは俺の財産でしかないじゃないか。そもそも俺が失敗ばかりするのは力の限りで挑戦し続けているからだ。これだけは胸を張って言える。失敗から学びがあるなら、挑戦も失敗もしない奴らよりよっぽどましなんだ。あと経験してない事と言えばリストラぐらいか?もし会社をクビになったら日本に帰って、本田圭佑が作った会社の面接を受けるよ(笑)
 
 
最後に今回の学びを以下にまとめておく。
 
・失敗を避けるな、正面衝突しろ
・車では衝突するな
・リスクを取って挑戦し、ノーガードで打たれろ
・迷うな、振り抜け、勢い余ってはみ出せ
・汚れた床には水をぶちまけろ(←これが強制退去の原因)

映画)7月7日、晴れ__本広克行__1996

7月7日、晴れ [VHS]

7月7日、晴れ [VHS]

  • 発売日: 1996/11/21
  • メディア: VHS
 
 こんな良い映画があったのか!1996年公開ということは僕はまだ小学生だったから知らなくて当然か(笑) 「踊る大捜査線」の本広監督のデビュー作らしい。天の川の両端に引き裂かれた織姫と彦星が年に一度7月7日にだけ会うことを許されるという七夕の伝説に沿った内容のラブストーリー。シンプルで爽やかですごく良い。
 全編を通してドリカムがBGMで流れ、今はなき懐かしさで溢れている。恋人に電話をするためにわざわざ電話ボックスまで出かけて行ったり、ああそんな時代だったんだなあと思う。一番好きだったのはみんなでわいわいと山にキャンプ行くシーン。全員が全員パワー全開ではしゃいでいて、こっちまで元気が出てくる。そして夜満点の星を見上げながら、観月ありさ扮するヒロインが「人がキャンプをする理由が分かった」と言う。彼女曰く、普段当たり前にやっていることが素敵なことだと分かるから、だと。何気ないシーンなんだけどはっとするというか台詞が頭に残ってしまった。なんか深いなぁって。。 日が登って一日が始まって、ご飯を食べて、日が沈んで一日が終わる、という当たり前のことすら忘れていた、とスター歌手として慌ただしい毎日を送る彼女はふと気がつくのであった。
 疲れている大人が見るにはいい映画だと思う。打算も見栄も何もない純粋な恋愛(への憧れ)を取り戻すきっかけになるかも。
 あとしれっと山本太郎がヒロインの追っかけの役で出ているのだが、演技が結構渋い(笑) この時点では彼が選挙に出るなんて誰も予想できなかっただろう。俳優山本太郎の復活に一票(笑)

本)夜想曲集: 音楽と夕暮れをめぐる五つの物語__カズオ・イシグロ__2009

 深い余韻の残る5つの物語。響きの良いことを安易に書いてしまわない抑制の効いた文体が特徴的。

 

 訳者あとがきで触れられていた翻訳にまつわる小話が面白かった。カズオ・イシグロほどの世界的な作家になると、長編小説を4〜5年かけて書き上げあげた後は、1年半から2年位は世界中を飛び回って新作のプロモーションをするらしい。もちろん小説を書く時間もとれなくなるから本当はやりたくないのだが、毎回出版社に無理やり駆り出される格好になる。そして海外で無数の取材を受けるうちに、自分の作品が翻訳でどう読まれるか(どのように訳されるか)を意識せざるを得なくなったということだ。この"インタビュー症候群"は、彼の文体にじわじわと影響を与えていった。カズオ・イシグロは英語で書く小説家だが(彼は両親は日本人だがイギリスで育った)、翻訳で消えてしまう英語独自の言い回しは極力避けるようになったらしい。

 ちなみに現代の日本人作家の中では村上春樹だけが世界中で読まれているわけだが、その理由は匿名性の高い小説を書いているからだという話を聞いたことがある。村上作品の主人公はどこだかわからない場所で(読み手がどことでもとれる場所で)、万国共通の自意識の問題について思い悩んでいる、と。良い悪いは別にして、それが読み手を選ばない世界文学を成立させているという話だった。そしてカズオ・イシグロの本作にもこれに通ずるものがあるように感じる。あくまで僕個人の感想だが本5編で共通している普遍的なテーマは、人生の分岐点に立つ人間が見る一瞬の心象風景のようなものだ。

在宅疲れMAX(駄)

 ここ最近急に暖かくなって、日中は半袖でも過ごせるようになってきました。ドイツには梅雨がないので、これからしばらくは気持ちのいい季節です。僕の住むヘッセン州では、先週末から全てのレストランが営業を再開したため一気に町が賑やかになりました。基本はまだ店内での飲食は禁じられており、テイクアウトか店の外のテラス席になるのですが、ドイツ人はもともとテラス席が大好きなので天気のいい日は大勢の人が店の外に張り出して食事をしています。平日でもたくさん人がいるのが不思議なのですが、在宅勤務になっている人達が仕事を放り投げて外で飲んだくれているのだと予想しています(笑) もちろん外では皆マスクをしていません。一気にたがが外れたようなこの状況。感染第2波が恐ろしいです。
 
 僕はここ最近は仕事がそんなに忙しくないため空いた時間を使って、インテリアショップを回ったり、写真管理用のNASを自宅に設置したり、掃除したり、家の住み心地を良くするための作業を色々やっています。日中結構活動的に過ごしてはいるのですが、さすがにほとんど人と話さない在宅生活に疲れており、特に夜になると気分が沈むことがあるため、10センテンス法というメンタルトレーニングを数日前から始めました。この方法はもともとパニック障害の治療のために開発されたもので、下の記事の書籍にて紹介されています。
 
 このトレーニングの内容はざっくり言うと、自分が理想とする人生を10個のシンプルな文にまとめ、1文ずつそれが叶っているシーンを5感を総動員して想像する、という実にシンプルなものです。これを続けると、(別にパニック障害じゃない人でも)ポジティブシンキングの脳神経回路が徐々に発達していき、その結果理想の人生が現実になっていくという理屈です。(なんか怪しい方法みたいですが笑、いわゆる"スピリチュアル"なものではなく科学的に理にかなったトレーニングです。) 僕が書いた文は例えば「くだらないことで爆笑しあえるパートナーや友達がいる」とかで、こういうのが10個あって、それを寝る前の20分間程度電気を消して集中して妄想しています。暗闇の中でいきなり笑ったりするので、客観的に見ると相当危ない人になっています(笑) まだ始めたばかりなので効果は出てきませんが、数週間後には元気を取り戻しているはず!
 
 とはいいつつもドイツの場合はまだましな方で、例えば僕の兄夫妻はアメリカに住んでいて、しかも結構コロナ感染が深刻なエリアにいるため大変そうなのだけれど、まあ夫婦でガチな引きこもり生活をしているわけです。彼らは政府から支給された一人1200ドルの給付金でお揃いのiPadを買い、暇をもて余す時にはお絵描きアプリで二人仲良くコロナウイルスの絵を描いているとのこと。例えばスケボーに乗っている少年の絵の、車輪がコロナウイルスになっている、とか(笑) そんな絵を大量に描いているらしい。。
 
 日本にいる父はといえばキャンバス画を描くことが趣味なのですが、今回利き手じゃない方の手(左手)で現代アートのような抽象画を完成させました。普段使わない方の手を使うと脳が活性化する、とかなんとか言って。
 
 みんなトリッキーな発想でもって必死に時間的空白と在宅疲れを解消しようとしているのが伝わってきます(笑) 今は誰もが若干頭おかしくなっているのかもしれないですね。
 
 UKに住む取引先の方に聞いたのですが、ロンドンの金融街ではいくつかの企業が既に社員の在宅勤務を8月末まで延長することを発表したらしいです。ここからまた3ヶ月延長は精神的にきついだろうなぁ。。僕の方は今のところ来月からはオフィスに戻れる予定になっています。こんなに会社に行きたいと思ったのは生まれて初めてです(笑) 

映画)記憶にございません!__三谷幸喜__2019

 政界の悪しき慣習に染まりきったダメダメ総理が記憶を失ったことを契機に、世間体や人間関係のしがらみから解き放たれ、国民のための誠実な舵取りをするべく人生をやり直していく話。脚本にはもう一捻り欲しいところもあったが、テーマがすごく良い。最低最悪の事態に追い込まれてようやく本当にやりたかったことをやる覚悟が生まれる、というのは大いに分かる気がする。悪の中枢である官房長官と対決する前に、もう何も失うもののない総理が「僕は怖くない」と言うシーンにとても共感した。あと、黒澤明の『生きる』という映画を思い出した。あれもめちゃめちゃ良いです(市役所勤めの公務員が癌になり、余命が短いと知らされたことをきっかけに、惰性で続けてきたそれまでの仕事ぶりを反省し変わろうとする話。)

 芸能関係の人は国絡みの仕事のオファーに影響するのを恐れて、政治に言及するのを避けることが多いと言われるが、三谷幸喜は例外だろうか。明らかに安倍内閣を揶揄するようなシーンもあった。こういう映画がくすぶっている政治家の心に火をつけたりしないのかな(うーん、意外とあるかもしれない)

 三谷幸喜と聞いて思い出すのが、以前彼がラジオにゲスト出演したとき視聴者から寄せられた「良い俳優ってどんな俳優だと思いますか?」との質問に対し、「スタッフに気に入られる俳優」と答えたこと。彼曰く、結局仕事をくれるのはスタッフなんだからそっちを楽しませるような演技をしなくちゃ、とのこと。映画を見てるお客さんを喜ばせたってなんの得もないから、って(笑)

 監督がそんなこと言ったんじゃ夢も希望もない(笑) ていうか、『記憶にございません!』の中で批判している国民を顧みない政治家達とほとんど同じ考え方じゃないか(笑)

本)敏感すぎるあなたへ 緊張、不安、パニックは自分で断ち切れる__クラウス・ベルンハルト__2018

 この本は不安神経症やパニック障害の発生メカニズム及び治療法について書かれたものです。私自身は今は健康ですが、昔一度だけ精神を病んだ経験から人間の心理に興味を持つようになり、たまにこのような精神医学に関する本を読んで勉強しています。当書中にて解説されている治療法は画期的で、且つ随所に元気をくれる言葉がちりばめてあり読み物としても楽しめました。

 この本の全ての土台になっているのは「何度も繰り返される思考は、脳内の神経ネットワークが強化されることにより自動化される」という脳科学の知見です。例えば何度も同じ英単語に出会うと瞬時に意味が出てくるようになる、というようなことです。そして重要なのは、これは無意識の次元でも同じことが起きる点です。つまりいつもポジティブにものを考える人は無意識レベルで"自動的に"世界がポジティブに見えるし、ネガティブな人は逆のことが起こるということです。

 いつも慎重に生きている人は確かに失敗を事前に回避できるかもしれませんが、世の中のネガティブな点を見つけ出す脳神経ネットワークが強化されているので、その逆にポジティブな点(楽しいことや嬉しいこと)を見つけ出すネットワークが衰えており、その点では大損しているのです。言われてみれば確かに、いつも石橋を叩いて渡る人の中に幸せそうな人や偉大な成功者はいない気がしますよね。このようにいつも「何か良くないことが起こるのではないか?」と考えていることを"防衛的悲観主義"というらしく、これが行きすぎると不安障害やパニック障害につながります。

 でも逆に言えば、どんな人でもポジティブに振る舞っていれば、無意識下で学習が進みポジティブな脳に生まれ変わることができるということです。これはなかなか新しい視点を私に与えてくれました。ポジティブに生きる上で大事なのは"習慣"であり、生まれつきの性格や過去のトラウマ、幼少期の親からの影響などはほとんど関係ない、というのが現代脳科学の主張なのです。

 例えば「幼少期に親から虐待を受けた人は、その後親になった時自分の子供に虐待を繰り返してしまう」という世間でよく言われている話がありますよね。実際何もしないでいるとそのような傾向があるのは事実なのですが、適切なメンタルトレーニングをすれば驚くべきことにたった数週間で改善されるらしい。当書の主張を私なりに解釈すると「虐待を受けたこと」より、「虐待を受けた人は虐待を繰り返してしまうという話を信じてしまうこと」の方が実質的には虐待の原因になっているようです。子育ての最中にその話を度々思い出すことによって無意識にネガティブな脳神経ネットワークを強化してしまうからです。(ちなみに"精神分析"と呼ばれる過去のトラウマとなっている記憶に医師と共に立ち返る手法は今もなおごく普通に行われていますが、痛みを思い出しネガティブネットワークを強化する点で、治療法としてナンセンスであることが分かってきています。)

 また当書にて、脳にポジティブなネットワークを作るためにマッスルメモリー(=筋肉の記憶)を使うというとても興味深い治療法について触れられています。ある研究グループが行った実験の話ですが、2つの被験者グループに同じマンガを読んでもらいました。その際一方のグループにのみ歯と歯の間に鉛筆を挟んだ状態で読んでもらいます。すると鉛筆を挟んだグループの方がマンガを高く評価したのです。これは、鉛筆を挟んでいるときの顔の筋肉の状態が笑った時の筋肉の状態と近いことにポイントがあります。本来笑顔が作られるときは、先に脳がポジティブな状態になり神経を通じて顔の筋肉に指令が出されるのですが、逆に先に笑顔を作ってしまえば脳に気分がいいと勘違いさせることも可能なのです。

 ポジティブに考える習慣を持つといってもどうやればいいのか分かりませんが、この本の中では上記のようないくつかの実践的な方法が具体的に説明されています。またこれらは精神疾患のない健康な人にも効果があるようなので私も試してみるつもりです。

 また、脳を再構築していく上でいい見本を持つこと、つまり目標にしたい人を見つけることも重要とのことで、その意味で普段からどんな人と付き合うかしっかり考えることを著者は強く奨めています。その際実に言い得て妙と言うべき表現を使っていたので下に引用しておきます。

 

「一緒に過ごす時間の最も長い5人を足して5で割ったのが、あなたという人間だ」

 

 尚私見ですが、この本には科学的に十分な検証が為されているのか怪しいと感じる記述がいくらかあるように感じました。でもコンセプトは斬新で明快ですので、全てを鵜呑みにせず自分で判断しながら読み進められるなら十分におすすめできる本です。今健康な人でも予防として読んでみるのも良いかもしれません。